ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「なあ、俺がここに監禁されてどのくらい経つ?」

「六日だよ」

「……はあ?! 六日?!!」
 
おいおい六日も寝ていたって言うのか! そんなに寝た……いや気絶したのは初めてだぞ。

「お兄さんよく寝てたよ」

「起こしてくれても良かったじゃん」

「だってうなされる様に見えたから」

「だったら尚更起こしてくれ?!」
 
でも俺はうなされる様な夢を見た覚えがない。

それに六日も帰っていないとなれば、今頃ミリィがご立腹だろう。オフィーリアだって俺を心配しているはずだ。

「帰ったらこっぴどく叱られそうだ」
 
苦笑しながら笑った時、マナティが小さく呟く。

「ここから逃げるなんて無理だよ」
 
その言葉を聞いて俺はマナティに問いかける。

「どうしてそう思うんだ?」

「だって誰も助けに来ないから」
 
マナティは初めて会った時と同じ目をしていた。

何も望まない何も信じていない希望を失った目。

マナティはここへ連れて来られて長い日をここで過ごしたのだろ。
 
いつか誰かが助けに来てくれる、最初はそう思っていたはずだ。しかし誰も助けに来ることはなく、ただただ時間だけが過ぎて行くだけ。
 
まだ子供であるこの子からしたら、誰も助けになんて来てくれない、誰も私を見つけてくれないと思ってしまうのは当たり前なことなんだ。

牢屋の隅でうずくまっているマナティの側に寄り言う。

「俺が助けてやるって言ったらどうする?」

「……無理だよ。怪盗レッドアイだって捕まってるじゃん」

「今回はちょっとヘマしただけさ」
 
そう、今回は俺の失態だ。

あんなことがなければここに監禁されるなんてこともなかっただろう。
 
しかし俺がここに監禁されなければマナティたちを見つけるのはもっと遅くなっていた。

「じゃあこれを見たらどう思う?」
 
俺は両手で拳を作りカウントダウンを始める。

「三……二……一……零!」
 
カウントダウンを終えると同時に、俺の手首にはめられていた手錠が外れる。

「……えっ?!」
 
マナティは驚いて俺と手錠を交互に見る。
 
囚人用の手錠だったらこんな簡単に外れることは絶対にない。てことは、これはその場しのぎにしかならない手錠ってことになる。