ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「きっとブラッドは予告状を出しに行って、その先で事件に巻き込まれたのかしれない」
 
ブラッドは予告状を出しに行った場所に居るはず。

「そうだとしたら一刻も早く助けに行かないと!」
 
クローゼットの前に立ちその中から動きやすい服を選んで着替える。壁に立て掛けておいたレーツェルを腰から下げる。

「ブラッドが予告状を出しに行った先は――」
 
手紙には【女神の涙】と書かれていた。

「女神の涙?」
 
知らないお店の名前だった。でも名前さえ分かれば、街の人にある場所を聞くことが出来る。

「なら、さっそくっ!」
 
手紙を持って部屋の扉に向かった時、突然体から力が抜けて床に膝を着いた。

「あ、あれ?」
 
体に力が入らない……? まさか……!

「うっ!」
 
胸元になる星の涙が微かに輝きを放ち始めると、体が大きく脈打ち高熱が私の体を襲う。

「こ、こんな時にっ……」
 
私は体を引きずりながら壁に手を当てて、何とか立ち上がろうとする。

「こんなところで……倒れるわけにはいかないのです!」
 
ブラッドを助けるまで、彼に会うまでは倒れることなんて出来ません!
 
私は首から下げられている守護石を掴む。

「絶対助けますから、待っててブラッド!」
 
ゆっくりと一歩ずつ前に進み、階段を下りて外へと出る扉に向かって歩き出す。

「とりあえず街に……行って、女神の涙のある場所を聞いて……」
 
この体を庇いながら戦うのはきっと厳しいだろう。でもブラッドと合流できれば、この発作は止めることが出来る。

「お願いだから保ってください……私の体!」

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「うっ……」
 
鉄臭いにおいを感じながら俺は薄っすらと目を開ける。

「こ、こは?」
 
体がだるいせいで目の前がぼやけて見える。しかし視界がはっきりしなくても、ここが牢屋だと言うことはすぐに分かった。

「なるほど……あの後まんまと捕まって、ここに放り込まれたってわけだ」
 
右目に付けていた眼帯の存在もない。という事は、俺が怪盗レッドアイだってことはもうバレているだろう。