ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

これは表に出していい宝石ではないのかもしれない。
 
胸ポケットから予告状を出し机の上に置く。踵を返し部屋から出ようとした時、右目が強く反応した。

「っ! なんだ!?」
 
まさか魔法のトラップでも発動したのか? それともこの付近で誰かが魔法を使っているのか?

「か、……じ……を」

「うっ!!」
 
酷い目眩に襲われたと同時に、鈍器で殴られたような激しい痛みが頭を走った。

「な、何だ、これはっ!」
 
魔力を感知している右目も熱くなってきて右手で目を抑える。

「いったい、何が……!」
 
どうやら一刻も早くここから出た方がよさそうだ。そう思ってドアノブに手をかけた時、頭の中で再び声が響いた。

「頂戴、頂戴、頂戴、頂戴、あなたの感情を――!」

「ああああっ!!!」
 
雫を何者かによって強く握り締められる感覚を感じ、その痛みにより思わず声を上げてしまった。

「ま、ずいな……」
 
今の声を聞きつけてこの部屋に人が駆けつけて来るのは時間の問題だ。早くここから出ないと! 
 
扉を引き廊下に出ようとした時、背後に誰かの気配を感じた。

「っ!!」

「……ふふっ」
 
この感じはなんだ? 今までに感じたことのない禍々しい魔力を背後から感じる。これはクラウンの魔力よりもっと!

「さあ、頂戴! あなたの感情を!」

「――っ!」
 
バタバタとこちらに走って来る音を耳にしながら、自分の中に何かが入り込んで来る存在を感じていた。

いや、魔力と言ったほうが良いか。
 
その魔力に体を侵食されて行きながら体が後ろに倒れ俺の意識は途絶えた。

✭ ✭ ✭

ブラッドが出掛けてからもう六日が経った。

【ちょっと出掛けて来る。直ぐに戻るから安心してくれ】
 
彼は私宛にそう書き置きを残していった。でもどこに行くかまでは書かれていなかったから、ブラッドがどこへ行ってしまったのか分からない。

「ブラッド……」

 私は部屋から外の様子を眺めていた。