「やあ、おはようございます。お嬢様」

「えっ?」
 
【お嬢様】と呼ばれたのが自分だと思わなかったのか、女性は左右に視線を向けた。しかしお嬢様と呼ばれたのが自分だと気がつくと俺に視線を戻す。

「お、おはようございます」
 
女神は恥ずかしそうにしながら挨拶を返す。俺は女神の胸ポケットに付いているネームを見て名前を確認する。

「君、カルディナって言うんだね。とても可愛い名前だ」

「あ、ありがとうございます」
 
カルディナは頬を赤く染めると俺から目を逸らす。
 
うん、とても可愛らしい仕草だ。

「あの、何か私に御用でしょうか?」

「ちょっとね、レギオさんい会いたくてここへ来たんだ」

「オーナーにですか?」

「うん、そう。でも部屋が分からなくてね、困っていた時に君みたいな、可愛い子が目に飛び込んできたんだ」
 
そう言いながら、俺はカルディナの手の上に自分の手を置く。

「だからオーナーの部屋を教えてもらえないかな?」

「お。オーナーの部屋はこの奥の廊下を左に曲がって直ぐです」

「ありがとう、カルディナ。また今度お茶でどうかな?」

「あっ……ぜひ!」

「それじゃあね」
 
最後にカルディナの手の甲に口づけをし、扉のドアノブに手をかけ部屋の奥へと入った。

「廊下の先を左に曲がって直ぐの部屋、ね……」
 
右目に付けていた眼帯を外し魔力を注ぐ。

「レギオの部屋に人は居ない。しかしその隣の部屋には三人。反対側の部屋には二人か」
 
変なことをしなければ気づかれることはないだろう。

「よし、ならさっそく侵入だな」
 
足音を立てないようにレギオの部屋に侵入する。

「特に変わったところはないか」
 
部屋に魔法のトラップが仕掛けられている様子はない。

「流石にここにお目当ての宝石は置いてないか」
 
そんなこと俺だってしないさ。