そしてもう一人は、昨日ミリィを助けてくれたナインと言う男だ。あいつは昨日会ったばかりだし、どういう魔法を使うのかは分からない。
 
それは後でミリィに聞くとして問題なのはあいつの戦闘能力だ。ナインは気配を完全に消して、俺の背後に経ち剣を振り下ろした。
 
本来ならこの右目があれば誰がどこにいるのかは代々検討がつく。

しかしこの右目は昨日反応しなかった。魔法を使えば直ぐに反応するが、あいつは魔法を使っていない。

いや、気づいていないだけであの時にはもう魔法を発動させていたのかもしれない。
 
最悪あいつとは刃を交えることになるかもしれないがなるべく戦闘は避けたい。

「レオンハルトたちに命令を出すとなると、昨日言っていたルヴィナスって人だろう」
 
【ルヴィナス】という名は何度か耳にしたことがあった。おそらく今回の宝石展示会でも表に出て指揮を出すことはしないだろう。

展示会場から離れた位置でレオンハルトたちに的確な指示を出すはずだ。

「展示会当日は警備の偵察がてら、ちょっとしたトラップでも仕掛けておくか」
 
そんなことを考えながら俺は女神の涙に向かった。

✩ ✩ ✩

女神の店の前に立ち、店の扉を引いて中へと入る。
 
結構早くきたつもりだったけど、店の中はたくさんの人で賑わっていた。

「昨日より客が多いな」
 
普通こんな朝早くに来るか? 少し疑問を抱きつつ、俺はレギオの部屋へ行く方法を探し始める。

「怪しいのは受付奥の扉だな」
 
受付には一人の女神が、一人のお客さんの相手をしていた。

「う〜ん。ここはなるべくスムーズに、そして簡潔にレギオの部屋に行きたいんだよな」
 
そうなるとあそこに居る女神がちょっとお邪魔かな。

ならここは久しぶりに俺の紳士ぶりを見せつけて、女神を口説き落とすとしよう。
 

客人の相手を終えた女神は軽く息を吐くと、胸ポケットから鏡を取り出し前髪のチェックをし始める。それを見た俺はチャンスだと思い女神の側に寄った。