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「ほら、ミリィ。ちゃんと俺の手を握っているんだよ」

「は〜い、レオン」
 
それは小さい頃の思い出だった。
 
森で迷子になった私を見つけてくれたレオンハルトが手を差し出してくれて、その手を私は嬉しそうに握る。
 
私は小さい頃からレオンハルトが大好きだった。
 
迷子になった私を必ず見つけてくれて手を握ってくれた。微笑んでくれると優しい手付きで髪を撫でてくれた。
 
だから私はセシルにレオンハルトを取られたくなかった。それは小さかった私でも、レオンハルトが好きなのはセシルだと知っていたから。
 
でもだからと言って、セシルが嫌いと言うわけではなかった。正直、羨ましかった。
 
セシルにはブラッドやレオンハルトが居て。私が欲しかった居場所を彼女が全部持っていた。それが心底羨ましかった。
 
だから一度だけ思ってしまった気持ちが一つだけある。

【セシルが居なかったら、あの居場所は私の物だったかもしれないのに】と――
 
そしてあの日、セシルは行方不明になってしまった。私は直ぐに後悔した。たった一度でも、私は何て馬鹿な考えを抱いてしまったのだろうと。
 
私は必死に二人の行方を追った。街で情報を集めたり聞き込みをして、色々な場所に行って二人を探した。しかし集めた情報の中には二人に関する手掛かりは何一つなかった。
 
結局二人を見つける事が出来ず半年が経った頃、私は森の中で倒れているブラッドを見つけた。私は直ぐにレオンハルトを呼んでき来て、ブラッドを私の家へと運んだ。
 
そしてブラッドからセシルが死んだ事を聞いた。私は自分の部屋で泣きじゃくった。結局私は自分が望んでしまった居場所を掴んでしまったのだから。
 
それからというもの、レオンハルトは人が変わったように事件の捜査に没頭していった。私はそれを止める事は出来なかった。
 
ただ月日が流れていくだけで、私は自分が抱いてしまった感情をずっと言えないまま、今日まで生きてきた。
 
今更、この気持を二人に打ち明ける事なんて出来ない。もし打ち明けてしまったら、今の居場所を失うと思った。

そんなの絶対に嫌だ。この居心地の良い居場所を失うなんてこと私には出来ない。
 
でもこの気持をいつかはレオンハルトたちに打ち明けないといけない。そうでないとこのままずっとレオンハルト好きでいるのが苦しい。
 
自分勝手なのは分かっている。結局私は自分の事しか考えていないんだ。