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屋敷に着いた俺たちはミリィを客室へと運んだ。

外はもうすっかり暗くなっていて空には星が輝いている。

「なかなか目を覚まさないな」

「そうだな……」
 
ミリィの体には呪術らしき魔法は掛けられていなかった。目を覚まさないとなると、ナインがミリィに何かした可能性があるが。

「ミリィの事は俺が見てるから二人は休んでくれ」

「でもお前も少しは――」

「ブラッド」
 
オフィーリアの手が俺の手に触れ言いかけた言葉を押し込める。

「……分かった。もう何も言わない。でも少しは寝ろよ」

「ああ」
 
最後にミリィの顔を見た俺たちが部屋へと戻った。

「ブラッド。ミリィは目を覚ますよね?」
 
ベッドに腰掛けてから彼女に微笑んで言う。

「大丈夫だ。どこも異常はなかったし明日の朝には会えるよ」

「そう、だよね」
 
オフィーリアは不安そうに窓の外を見つめる。まさか自分を責めているのだろうか? 

「オフィーリア」
 
俺は優しい声音でオフィーリアの名前を呼んだ。その声に彼女はゆっくりと振り返る。そして頬を少し赤く染めて側に来ると隣に腰掛ける。

「オフィーリアのせいじゃない」

「でも……」
 
彼女の体を優しく抱きしめ髪を撫でる。

「気にするな。そんな気負いすると体に負担が掛かる」

「ブラッド……」
 
オフィーリアは俺に身を委ねるように体を預けてくる。

「最近どうだ? 星の涙の方は?」

「うん、大丈夫よ。発作も出ていないしブラッドの魔法が効いているもかもしれない」

「なら、良かった」
 
だが、またいつ発作が出るか分からない。これからはなるべく、オフィーリアの側に居るようにしよう。

「今日は【虹の花】に関する魔法書を借りて来たんだ」

「虹の花?」
 
オフィーリアは小さく首を傾げると顔を上げる。

「また色々分かったらちゃんと話すよ」

「……うん。待ってます」
 
そう言ってオフィーリアは優しく微笑んだ。そんな彼女の頬に触れて言う。

「必ず一緒に生きよう。オフィーリア」

「…………はい」