「あの、レオンハルトさん?」
 
ナインの声で我に返ったのか、レオンハルトはナインの側に寄るとミリィの体を抱き上げる。

「ああ…知ってる」
 
レオンハルトはそれだけ言うとナインに背を向ける。

「やっぱりそうですよね。この子、意識をなくす前にレオンハルトさんのことを呼んでいたんで」

「俺の名前を?」
 
レオンハルトはミリィを見下ろすと優しく頬を撫でる。

「ところでミリィさんが狙われていたと言うのは、いったいどういう事ですか?」
 
ミューズの質問にナインは確認を取るようにレオンハルトに問いかける。

「良いんですか? この二人は部外者なんじゃ?」

「別に構わない。ブラッドは探偵で彼女はその助手だからな」
 
じょ、助手?!

「……レオンハルトさんが良いって言うなら話しますね」
 
ナイは俺たちに向き直ると話し出す。

「ミューズさんから離れた俺は一人で路地裏を張っていました。奴らが人を攫うなら、人気がない場所だと思ったんで」
 
ナインはレオンハルトに抱かれているミリィを見て言う。

「その時に彼女が迷い込んで来たんです」

「それでお前はミリィをどうした?」

「もちろん裏路地から遠ざけようとしましたよ。でもタイミング悪く襲われて」

「道化師にか?」

「はい」
 
その言葉に俺とオフィーリアは互いに顔を見合わせる。
 
どうやらオフィーリアも気づいていたようだ。今回の人攫いの事件は、道化師と何か関係があるんじゃないかと。

「そこで俺は彼女を守りながら戦いましたよ。すっごく疲れましたけど、俺の魔法で姿は隠していたので」

「そうか……ありがとうナイン。感謝するよ」
 
レオンハルトは深く頭を下げる。その姿を見たナインは軽く笑うと言う。

「当然の事をしたまでですよ。結局は逃げられちゃいましたし、奴らが人攫いをする糸口すら見つけられなくて」

「それは構わない。今回の事はルヴィナスさんに報告して上からの命令を待つ」

「了解です。ところで、レオンハルトさん」
 
ナインはニヤニヤしながらレオンハルトの側に寄ると聞く。