「どうやら俺の勘違いだったみたいですけどね」

「ナイン……今までどこに居た?」

「何って? 事件の捜査ですけど?」
 
首を傾げるナインは勝手に単独で行動した事を悪いと思っていないようだ。そんなナインを見るレオンハルトからは殺気が漏れている。

ただでさえ今は機嫌が悪い状態なのに、これ以上機嫌が悪くなったら俺でも止めるのは一苦労だ。

さっきミューズが言っていた、新しく配属された新人ってのがこの男みたいだな。

「てゆか、何でレオンハルトさんは殴られていたんですか?」

「傍観していたのか?」

「少しだけですよ。何を話していたかまでは分かりませんが」
 
そう言って軽く笑うナインを、俺はオフィーリアの隣から見ていた。

ミューズと言い、ナインと言い、魔道捜査一課には只者じゃない奴がたくさん居るようだ。
 
とりあえずナインもミューズと同じく警戒した方が良いだろう。

「オフィーリア。剣はしまっても大丈夫だ」

「分かった」
 
オフィーリアは頷くとレーツェルを鞘に戻す。その様子を見ていたナインは、何かを思い出したように手を叩く。

「そうだ。一人女の子を保護したんですけど」

「女の子?」

「路地裏で迷子になっていたらしく、ちょうど奴らからも狙われていたみたいなんですよ」
 
そう言いながらナインは指を鳴らす。するとナイン脳での中には布で包まれた女の子が姿を現す。
 
そして俺たちはその女の子を目にして一斉に驚いた。

「この子なんですけど、レオンハルトさんこの子に見覚えないですか?」

「……っ」
 
ナインの腕の中では寝息を立てているのはミリィだった。そんなミリィをレオンハルトは黙ったまま見つめている。