「ブラッド!」

「レオンハルトさん!」
 
倒れかけるレオンハルトの胸倉を掴み自分の元へ引き寄せる。

「ミリィの事が心配なのは分かる! でも少しは自分の体を労れよ!」
 
俺の怒声に目を丸くしているレオンハルトに更に言葉を続ける。

「今のお前の面……すっげぇ酷いんだよ。そんなの帰って来たミリィが見たら、心配するに決まっているだろ!!」

「ブラッド……」

「ミリィの事は俺に任せろ。だから……少し休んでくれ」
 
言いたい事を全て終えた俺がレオンハルトから手を放す。

「少し休んでミリィを抱きしめてやれ」

「……」
 
レオンハルトは視線を下げる。
 
少しやり過ぎかと思ったが、こいつにはこれくらいしないと駄目だ。でないと止める事が出来ない。

「面白い事をしていますね。俺も混ぜてください」

「っ!?」

「ブラッド!」
 
後ろで声が聞こえたのは一瞬だった。
 
オフィーリアがレーツェルを抜くのと男が剣を抜くのはほぼ同時で、男の剣が俺の体に向かって振り下ろされた時、オフィーリアは一気に距離を縮め男の剣を跳ね返した。

「うわぁっ! 凄いな〜。あの距離から良く俺の姿が見えましたね」

「お、オフィーリア?」
 
男の言葉を無視しながら、オフィーリアは俺に駆け寄る。

「大丈夫ブラッド?」

「あ、ああ」
 
何が起こったのか分からなかった。男の気配も感じなかったし、右目だって反応しなかった。

「ちょ、ちょっと何しているんですかナインさん!」
 
ミューズにナインと呼ばれた男は不思議そうに目を瞬かせると言う。

「あれ? ミューズさんじゃないですか? こんなところでどうしたんです?」

「し、知り合いなのか?」

俺を背後に庇いながらオフィーリアはナインから距離を取る。そんな俺たちをナインは苦笑しながら見てくる。

「そんな警戒しないで下さいよ。せっかく美人なのにそれじゃあ台無しです」

「あなたから一瞬だけど殺意を感じました。あなたは少なからずブラッドを本気で殺そうとしたのよ」

「それはレオンハルトさんが襲われているように見えたからですよ」
 
え、そんなふうに見えたのか?
 
ナインはヨロヨロと立ち上がるレオンハルトを見て軽く息を吐く。