「レオンハルトの手は昔に比べたら大きくなったよね」

「ミリィだってそうだろ?」

「そうかな?」
 
首を傾げるミリィを見て自然と顔が綻んだ。
 
俺の隣に居るミリィは、俺の知っているミリィとは違ってもう一人の大人の女性になっていた。でも一人の女性になったと言っても、ミリィはミリィのままだった。

「ミリィ。そこ木の根っこが出てるから気をつけろよ?」

「大丈夫。もう転ばないよ」

「だと良いけどな」
 
まだ少し危なっかしくて心配なところもあるけど、ミリィに会えてよかった。話せてよかったと、この日俺は心からそう思った。

✩ ✩ ✩

「あのぅ……ミリィさん?」

「なに? レオンハルト。どうかした?」

「いや……それを聞きたいのはこっち。ミリィは俺に何をしているんだ?」

「ボディーチェックだよ」
 
だからそれを行う理由が分からないんだ! 
 
あの後ミリィはと一緒に俺の家に来たまでは良かった。そして家の中に入った時いきなり――

「レオンハルト。今直ぐ服を脱いで」

「……はあ?!」
 
ミリィに何の説明もされないまま、俺はこうしてボディーチェックを受けている。これはいったいどういう状況なんだ……。こんなところブラッドに見られたらなんて言われるか。

「な、なあミリィ……ちゃんと説明してくれないか?!」
 
でないと俺の中で何かが切れそうなんだ!

「だから今はレオンハルトの怪我のチェックをしているの」

「け、怪我のチェック?」
 
何でまたそんなことを?

「ほら前に言ったじゃない? レオンハルトが警察学校に行く日に」

「あっ」
 
そこで俺はあの時の言葉を思い出す。

「だから私ね、ブラッドやレオンハルトが怪我をした時、直ぐに治療が出来るように治癒魔法を覚えたの」

「凄いな、ミリィ! 治癒魔法なんて難しい魔法を覚えただなんて」
 
その言葉に微笑んだミリィは優しく言う。

「私も二人の力になりたかったから」

そう言う彼女の髪に俺は手を伸ばす。

「よく頑張ったな」

「っ!」 
 
急に髪を撫でられて恥ずかしいのかミリィは頬を赤く染める。

「も、もう髪は撫でなくて良いから! 服着てね!」
 
ミリィは椅子に掛けていた上着を取ると俺の投げつける。

「わ、分かったよ」
 
そんなに嫌だったのか? 小さい頃は髪を撫でたら喜んでいたのに?
 
上着を着終えた俺はミリィと向かい合った状態で椅子に座る。

「ミリィ。他に行きたいところないのか?」

「特にないかな」
 
俺の質問に対してミリィは考える素振りを一切見せず即決でそう述べた。

もう少し悩んでほしいところなんだけど……。