「嬉しい……ようやく、ようやくレオンハルトに会えた」

「ごめんな。会いに来なくて」
 
ミリィは頭を左右に振ると言う。

「レオンハルトが忙しいの、ちゃんと分かってるから」

「ミリィ……」
 
今……目の前に居るミリィは本当にミリィなのか? こんなに素直なこと言える子だったか?

「あ〜っ! ひょっとして私の事、こんなに聞き分けの良い子だったっけと思ったでしょ?」

「えっ、いや、それは」

「言っておくけど、私だって今日で十七歳になるんだよ。もう子供じゃないんだから」

「そ、そうだよな」
 
ミリィは満足したのか嬉しいに笑う。

「うん、そうだよ」
 
その笑顔を見て頬がまた熱くなる。なぜ熱くなったのか分からなかったが、俺の中では今直ぐにミリィを抱きしめたい衝動に駆られていた。

「あ、あとさ……レオンハルト」

「ん?」
 
急に頬を赤く染めたミリィは俺から目を逸らすと言う。

「えっと……私は全然構わないんだけど、いつまで抱きしめてくれるのかなって思って」

「えっ……あっ!」
 
ミリィに言われてようやく気がついた。抱きしめたい衝動に駆られながらも、もう既に抱きしめていことに。

「わ、悪い!」
 
さすがにまずいと思い直ぐにミリィから離れる。すると彼女はなぜか不服そうに頬を膨らませる。

「もう少しくらい良いじゃん」

「いや……そういうわけには」
 
これ以上やったら俺の中の何かがおかしくなりそうだ。

「ふふっ、冗談だよ。レオンハルトはちょっと可愛くなったね」

「お、俺が可愛い?!」
 
いやお前の方が可愛いだろ?! そう言いそうになりぐっと堪える。

「そ、その話しは置いておいてだな。これから一緒にどこかに行かないか?」

「これから?」

「時間ももう遅いから限られた場所しか行けないけど」
 
ミリィは少し考え込むと確認するように聞いてくる。

「それはレオンハルトと二人きりってこと?」

「そうだよ。俺とミリィの二人だけだ」
 
俺は優しく微笑むとミリィの手を差し出す。

「お手をどうぞ。お姫様」

「お、お姫様って……」
 
ミリィは気恥ずかしながらも。俺の手のひらの上に指先を乗せる。