でもここで立ち止まっているわけには行かない。しかし早くミリィのところへ行きたいと思うのに、足が言う事を聞いてくれない。いったいどうしたと言うのだ?!

「ま、いっか。ブラッドもそろそろ来るだろうし」
 
ミリィはそう言うと真っ直ぐ泉を見つめた。

「懐かしいな……ここも」
 
ミリィは昔の事を思い出したのか、泉に向かって手を伸ばす。そして寂しそうな表情を浮かべると言う。

「今年も……来てくれないのかな?」
 
ミリィは伸ばしていた腕を引っ込めると言う。

「ねえ……今日で十七歳になったよ?」
 
その姿は誰かに伝えているように見えた。その相手が誰なのかは分からないが。

「今の私なら……少しくらい一人の女性として見てもらえるかな?」
 
ミリィは苦しそうに自分の胸に手を当てる。
 
どうしてそんな顔を浮かべるのか理由は分からなかった。でも今はそんな顔を浮かべないで欲しい。今日はミリィにとって大切な日だ。だからミリィは笑っていてほしいんだ。
 
俺は拳に力を込めるとミリィの元に向かって歩き出す。

「せっかく今日の主役なのに、そんな表情を浮かべるな」

「えっ……」
 
俺の声に気がついたミリィはこちらを振り返る。そんな彼女を後ろから優しく抱きしめる。

「――っ! もしかして……レオンハルト?」
 
初めて【レオンハルト】と呼ばれ肩が少し上がる。俺は軽く笑ってミリィの顔を覗き込んで言う。

「やあ……久しぶりミリィ」

「ほ……本当にレオンハルト、なの?」

「そうだよ」
 
驚いて目を丸くしているミリィに俺は優しく微笑む。
 
こうして間近で見ると、ミリィは大人の女性へと成長していた。もう四年前の幼さはどこかへと消え去っている。今俺の前の前に居るミリィは一人の女性だ。
 
小さい頃はお互いに顔を近づけてよく話していた。でも今のミリィにはそんなことはもう出来そうにない。

「今日のために……来てくれたの?」

「ああ、ブラッドに言われてな。たまには、こっちに帰って来いって」
 
俺の腕の中で微笑むミリィを見て、少し頬が熱くなるのを感じる。

ふいに可愛い笑顔を向けられ少し調子が狂うな……。