ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

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ブラッドと別れた俺は指定された場所の泉へと来ていた。
 
月の光に照らされる泉はとても神秘的で、見ているだけで心を落ち着かせる事が出来る。だが――

「少し緊張して来たな……」
 
やはり四年振りに会うとなるとそれなりに緊張するものだな。四年振りに会うミリィは、一体どんな容姿をしているのか、どんな女性に成長したのか……。

「やっぱり最初に声をかけるなら、【久しぶり】の方が良いか? それとも誕生日だし、【おめでとう】の方が良いのか?」
 
きっと今頃ブラッドが上手くミリィを外に連れ出している頃だろう。俺は鞄の中にある髪飾りの入った袋を確認する。

「喜んでくれる……か?」
 
よく考えてみれば、俺はミリィにちゃんとした贈り物をした事がない。

今までの誕生日プレゼントだって、どれもブラッドと一緒に選んで贈った物だし、ミリィは何でも良いと言ってくれていた。でも今回は違う。
 
これはちゃんと意味のある贈り物だ。この髪飾りに込められた思いは、絶対にミリィを厄災から守ってくれる。

そう信じて俺はこれをミリィに贈るんだ。

「もう……いったい何の用事なのよ?」

「来たか……」
 
ミリィの姿が見えたら直ぐに姿を現す予定だった。しかしつい条件反射で俺は木の影へと隠れてしまった。

「な、何してんだ俺は……?」
 
今直ぐここから飛び出してミリィにプレゼントを渡したいのに、俺は木の影からこっそりとミリィの様子を伺っている。

「目の前に犯人がいるわけでもないのに、俺は何にビビって――」
 
いや、違うか……。俺は四年ぶりに会うミリィが少し怖かったんだ。会って拒絶されたらと思うと、怖くて前に一歩踏み出せなかったんだ。

「確かブラッドはここを指定していたはずだけど?」
 
月の光がミリィの姿を照らした時、俺は思わず目を見開いた。そこに立っている彼女は、俺の知っている小さな女の子ではなかった。

月の光に照らされた金髪は青味を帯びたように輝いて見え、泉を見つめ薄桃色の瞳はピンクサファイアのような淡い光を纏っているように思えた。

「み、ミリィ……なのか?」

ミリィの成長した姿が目に飛び込んできて、心臓が大きく跳ねた気がした。遅れて心拍数も上がって来ている気がする。