ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

どうやらあの言葉は本当のようだ。ここから見ても料理にはかなり自信があるように見える。

「ミリィは毎日来てるのか?」

「ああ。学校に行く前には来てくれるよ」

「あいつも大変だな」

「世話焼きすぎなんだよ。俺だってもう自立出来るってのにさ」

「お前の事が心配なんだろ?」

「そういうお前もだろ?」
 
そこで俺たちの会話は途切れ、俺は目の前に置かれた昼食を美味しく頂いた。

✩ ✩ ✩

「そう言えばミリィは今日学校なのか?」

「いや、今日は友達と街に遊びに行ってるよ。夕方には戻って来るけど」

「そうか」
 
そう一言呟き、ブラッドが用意してくれた紅茶を一口飲む。うん、俺好みの味だ。

「気になるのか?」

「別に……ミリィにもちゃんとした友達が居て安心しただけさ」
 
小さい頃は俺たちの側を離れようとしなかったし、セシル以外に友達と呼べる子も居なかったから心配していた。でもそれは杞憂だったようだ。

「お前はミリィの兄貴かよ……」

「俺はそういう立ち位置だろ?」
 
俺の言葉に表情を歪めたブラッドは嫌そうな顔で言う。

「まさか……その立ち位置ってのは、俺も同様だったりするのか?」

「当たり前だろ?」

「お前が兄貴とか絶っっっ対に嫌だね!!」
 
ブラッドは腕を組むとそっぽを向く。

そこまで嫌がる事ないだろうと思いつつ、俺は軽く息を吐いて言う。

「冗談だ。俺だってお前の面倒を見るつもりなんてないさ」

「そういうのはミリィで充分だ」

「……そうだな」
 
目を細めて紅茶の入ったカップを見つめる。

「なあ、ブラッド。ミリィは知らないんだよな?」

「ん? 何が?」

「俺たちが道化師を追っている事を」
 
腕を組んでいたブラッドは俺の言葉を聞くと真剣な表情で静かに言う。

「当たり前だろ」
 
そう言ってブラッドは立ち上がると、日差しが入り込む窓の前に立つ。

「ミリィには何も伝えていない。俺たちが道化師を追っている事なんて知らないさ」

「なら、良い」
 
この件にはミリィを絶対に巻き込みたくない。これは俺とブラッドでやらなければならない事だから。

「あ、ちなみに今日お前が来ることミリィには言ってないから」

「は? 何で?」

「何でって……仕事が忙しいだろうし、どうせ今年も来ないと思ったんだよ。前に言った時も来てくれるような雰囲気じゃなかったしな」

「それは」
 
確かにあのとき直ぐには頷かなかったけど。