ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1


そう思ったとき話を一区切りつけるためか、咳払いをしたブラッドが聞いてくる。

「つうか何でレオンハルトがここに居るんだ? 仕事の方はどうしたんだよ?」

「お前が言ったんだろ? ミリィの誕生日には顔くらい出せって」 
 
俺の言葉にポカンとした表情を浮かべたブラッドは考え込みながら言う。

「ああ……そういえば言ったな」
 
自分から言っておいて普通忘れるか!?

「いつもだったら仕事で忙しいって言っているお前が、ミリィのためにわざわざ仕事休んで来たと?」

「明日には帰らないといけないけどな」
 
俺の言葉に目を細めたブラッドは胸の前で腕を組むと言う。

「また急だな。もう二日くらいゆっくりしても良いだろ?」

「悪いけど仕事優先だ。俺はお前と違って忙しいからな」

「ほ、ほっとけ!」
 
慌ててそっぽを向くブラッドを見て軽く笑う。

「んで、ミリィのところには行ったのか?」

「今さっき着いたばかりなんだ。だからこれから昼食を取ろうとしてな」

「なら俺の屋敷に来いよ」

「良いのか?」

「ミリィは居ないけど、昼食くらい俺だって作れるさ」
 
その言葉に俺は疑いの眼差しをブラッドに向ける。

「な、何だよその目は……」

「いや、何でもない」
 
俺はブラッドを置いて先に歩き始める。
 
ブラッドの手料理には少し不安を抱くが……まあ大丈夫だろう。そう神に祈りつつ、俺たちはブラッドの屋敷へと向かった。

✩ ✩ ✩

「久しぶりだな。ここに来るのも」
 
ブラッドの屋敷に来るのも四年ぶりだった。
 
屋敷の中はセシルやブラッドたちが住んでいた時と、何ら変わらず再現されていた。


あのとき屋敷の全ては燃えてしまったはずだった。

しかし帰って来たブラッドが、再建築の魔法を使って屋敷を元の姿へと復元させた。それがブラッドの今暮らしている屋敷だ。

「そこに座れよ。今から昼食作ってやるから」
 
ブラッドに促されるまま俺は近くにあった椅子に座る。そして部屋の中を見渡す。

「何も変わらないな」

「そんなことないぞ? ここは違っていなくても二階は少し変わったし」
 
上着を脱いで腕まくりをしているブラッドが言う。

「部屋が広くなったとかか?」

「そんなところだ」
 
ブラッドはそう言うと、慣れた手付きで料理を始める。