ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「四年振りだな、俺がここに来るのも……」
 
最後にここへ来たのは俺が警察学校に入る前の事だ。家を出る数日前にお墓参りに来て、セシルに【行ってきます】と言ったんだ。

それ以来、ここには一度も来ていなかった。

「今日はミリィの誕生日なんだ。あいつ今年で十七歳になるんだ」
 
そう言いながらセシルの名前が彫られた石碑をそっと撫でる。

「セシルも生きていたらミリィと同じ十七歳か……」
 
そう小さく呟いて立ち上がる。

「セシル。必ず道化師は捕まえて見せるから、その時はブラッドとミリィと一緒にここに来るよ」
 
石碑に背を向け俺は懐かしい故郷に向かって歩き始めた。
 
ここからだとミリィが住んでいる地区まではそう遠くはない。

バスを乗り継ぎしながら、見覚えのある街に着いた頃にはもう昼近くになっていた。

「さすがにミリィの家に行くのは早いしな」
 
俺は街のあちこちに目を向ける。
 
四年前も経つと街の姿も変わるものだな。四年前と比べると街中は少し活気が溢れていて、人もたくさん行き交っている。

「適当に店を見つけて昼飯を……」
 
と思った時、俺は見覚えのある姿を見つけた。
 
周りにはその人物を囲むように女性たちが群がって……いや大勢集まっていた。

「あいつ……」
 
その光景を見て【またか】と思い深く溜め息を溢す。そして女性たちの集まる場所に向かって歩き出す。

「ブラッド様。このあとお時間ありますか?」

「ごめんね、この後は大切な用事があるんだ」

「そんなことより、わたくしたちと遊びましょうよ」

「ごめんね、また今度にしよう」
 
間近で見ると本気で何をやっているのかと問い正したくなるが、今目の前で行われている事が全ての答えだ。

仕方なく女性たちの輪をかき分け俺はブラッドの服の襟元を掴み、無理矢理その場から退散させようとした。

「ちょっ?! 誰だ!?」

「俺の声を聞いても分からないなら、今直ぐ名乗ってやろうか?」

「げっ! レオンハルト?!」

「まったく……お前は」
 
俺は冷たい視線をブラッドに送った。
 
まさかこいつ仕事もしないで、四六時中こんなことやっているんじゃないよな?

「そ、そんな冷たい目で見るなよ!」

「お前なあ……もう二十歳だろ?! そろそろ良い歳のお前が、女性たちにチヤホヤされても意味ないだろ?」

「いや、あるね! 女の子たちは俺にとってみんな女神なんだ!」
 
真剣な表情で言ってくるブラッドを見て目を丸くする。

「女神……ね」
 
こいつ絶対好きなやつ出来ないな。