ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ちなみにその子は今年でいくつになるんだぃ?」

「十七ですよ」

「ほうほう。年頃の女ってところだね」
 
ルヴィナスさんは胸の前で腕を組むと何度も頷いた。さっきからこの人は何なんだ……。

「となると、好きな人の一人や二人いるか」

「居るんじゃないですか?」
 
ミリィだってそういう年頃だ。好きな人くらい居るだろう……おそらく。

「いや、もしかしたら居ないかもしれないよ?」

「……どうしてそう言い切れるんですか?」

「そりゃ女の感って奴さ」
 
目を細めてルヴィナスさんを見る。
 
この人の感なんて当てになるのだろうか?

俺は深く溜め息を吐き、再びキーボードを叩き始める。

「それでどうするんだぃ? もしその子に好きな人が居たら」

「別に? 普通に応援しますよ。……でも」
 
俺はキーボードを打っていた手を止め、軽く微笑んでからルヴィナスさんに言う。

「もしそいつがミリィを泣かせたら、少し覚悟してもらわないといけないですね」

「こ、怖いなお前……」

「こ、怖いですレオンハルトさん!」
 
俺の笑顔を見た二人は部屋の隅に寄った。

「冗談に決まっているじゃないですか」

「お前のは冗談に聞こえないんだよ……」
 
ルヴィナスさんは吸いかけの煙草を缶の中へと捨てる。

「じゃあその日は特別に休みしてあげる」

「ありがとうございます。ルヴィナスさん」
 
もう一度ルヴィナスさんに微笑みパソコンに向き直る。

「そうだ」
 
久々にあっちに帰るならセシルの墓参りに行こう。セシルには話したい事がたくさんあるしな。
 
そんな事を考えながら俺は捜査資料をまとめあげた。

✩ ✩ ✩

「え〜と。ミリィへの誕生日プレゼントは持ったし、あとは……」
 
あと持っていくとするなら、ミリィの親父さんが喜びそうなお酒とちょっとした料理に。

「あとは花か」
 
必要な物を鞄にしまい俺は部屋を出た。 
 
ちょっと早めに出たせいか辺りはまだくらい。人の姿もほとんど見られない。

「ミリィたちのところに行く前に、セシルのところに行くか」
 
俺は街から少し離れた位置にある教会に向かった。

教会に来る途中で買った色とりどりの花がまとめられた花束を、セシルのお墓の前に置く。

「やあ……久しぶりだねセシル」
 
しゃがみ込み俺はセシルのお墓を見つめた。