ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ちょっと幼馴染の誕生日プレゼントを選んでいたので」
 
机の引き出しを軽く引き、髪飾りの入った袋をそっと入れる。

「へえ、あんたにも幼馴染と呼べる存在が居たんだね」

「居ますよ」
 
ルヴィナスさんの話を軽く流しつつ、目の前のパソコンを開き電源を付ける。

「あ、ルヴィナスさん。一週間後の日曜日休みます」

「えええ? 何でよ?」

「大事な用事があるので」
 
俺はそれだけ言うとパソコンに向き直る。

「もしかして幼馴染さんのお誕生日ですか?」
 
ミューズの言葉に軽く頷き捜査資料をまとめるためキーボードを叩いていく。

「ここずっとお前には、ろくに休んでもらってなかったからなあ」
 
ルヴィナスさんが軽く煙草を吹かすと俺のところまで歩いて来る。

「もしかしてその幼馴染ってのは女の子かい?」
 
その言葉にキーボードを叩いていた手を止めてルヴィナスを見上げる。

「そうですよ。もちろんルヴィナスさんよりも、ずっと女の子らしくて可愛い子ですよ」

「そりゃあ私より女の子ってのは認めるさ。どんな子か知らないけどね」
 
軽く溜め息を吐くルヴィナスさんは、何を思ったのかニヤリと笑うと言う。

「もしかしてレオンハルト。その子が好きなのか?」

「えええっ!」

俺が驚く前に先にミューズが声を上げた。
 
なぜミューズが驚くんだ?

「どうしたんだい? ミューズ」

「い、いえ……何でもないです」
 
そしてなぜか肩をガクリと落とす。それを見たレヴィナスさんはクスクスと笑っていた。

「彼女は……ただの幼馴染ですよ」

「それはどうかねぇ?」
 
まったくこの人はこういう話が好きだよな。自分に対しての話は一切しないのに、他人の話となると異様に食いついてくる。

「本当にただの幼馴染ですよ。それに彼女とは四年振りに会うんですから」

「えっ? 四年も会っていないのかい?」

「はい。色々と忙しいので」
 
ちゃんとした休みが貰えるのなんて年に五日程度だろう。その中でミリィと会う時間を作るのは難しい。俺にだってやりたい事がたくさんあるんだ。