ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「ヘマタイトの宝石言葉は、生命力、秘めた思い、そして身代わり」

「身代わり?」

「ヘマタイトは持ち主を厄災から守ってくれる宝石なんですよ。持ち主に危険が迫った時、この宝石が身代わりになってくれる事があるんです」

「身代わりになってくれる……」
 
それなら――

「すみません、これ下さい」

「はい、ありがとうございます!」
 
この宝石はミリィに持っていて欲しい。ブラッドが側に居なく、俺も側に居ない時、この宝石がミリィを守ってくれるように。

「大事な幼馴染さんなんですね」
 
その言葉に目を見開いた俺は軽く微笑んで言う。

「そう、ですね。とても大切な子です」

「ならこの髪飾りに特別なおまじないを掛けておきます」

「おまじない?」
 
オーナーは魔法陣が描かれた布の上に、さっき髪飾りを置く。

「ちょっとしたおまじないなので、少しお待ちください」
 
胸の前で印を結んだオーナーは、小さな声でぶつぶつと何かを唱え始める。

「――っ」
 
聞き取ろうとしたが、声が小さすぎるせいか上手く聞き取れない。

「はいこれで終わりです」
 
オーナーは布袋に髪飾りを入れると俺に手渡す。

「わざわざすみません。それじゃあお金を」

「あ、お金は大丈夫ですよ」

「えっ?! でもただで貰うわけには」

「良いんです。実はこのお店閉店する予定なんです」

「そ、そうなんですか?」
 
オーナーは店の中を見渡す。

「閉店すると言っても、ここから少し離れた街に移動するだけなんです」

「また機会が会ったらお会いしたいですね」
 
俺の言葉にオーナーは苦笑すると言う。

「そうですね、機会があったら」
 
✩ ✩ ✩

店を出た俺はそのまま警察本部へと戻った。

「お帰りさない、レオンハルトさん」

「ああ」
 
「今日はギリギリで戻って来るなんて珍しいじゃないか、レオンハルト」
 
煙草を吹かしながら窓の外を見つめている、俺たちの先輩のルヴィナスさんがそう言う。
 
俺はルヴィナスさんの隣を通って自分の席に着く。