ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

俺が居ないと駄目だし気がついたらどこかで迷子になっている。

でもその度に俺は必ず見つけている。これはブラッドでも難しい事で、迷子になったミリィを見つけるのは俺が担当だ。

「じゃあ帰ろうか。セシルも送っていくよ」

「はい!」
 
俺はセシルとミリィの手を繋いで歩き始めた。

「ねえレオンハルトお兄様」

「なに? セシル」

「今度お兄様が帰って来たら、みんなでまた森で遊びましょうね」

「うん、そうだね」
 
セシルとの約束は直ぐに現実になると思っていた。
 
ブラッドが無事に帰って来てそうしたらまたいつも通り、夕方になるまで四人で森の中で遊ぶ。

たまにミリィとブラッドが喧嘩をして仲直りさせたり、セシルと一緒にお昼寝したり、そんないつも通りの日常を送れると思っていた。

あいつらがセシルを連れて行くまでは――

「今日はどこで遊ぶの?」

「今日は公園で遊ぼっか」

「わ〜い!」
 
機嫌が良さそうに辺りを飛び回っていたミリィは、待ちきれないのか先にセシルの屋敷に向かった。

「そんなに急いだら転ぶぞ」

「大丈夫だよレオン!」
 
俺は軽く息を吐いた。そしてセシルの屋敷が見えてきたところで、俺はある違和感に気がついた。

「木の実が枯れてる?」
 
俺はセシルが好きだと言っていた木の実を一つ取ってみる。それは真っ黒に燃えた後のような色をしている。

「何かあったのかな?」
 
そう思った時だった。

「れ、レオンっ!!」
 
ミリィの叫び声が聞こえ俺はとっさに走り出した。ミリィの叫び声が聞こえたのは、セシルの屋敷の方向からだった。

「どうしたミリィ?!」

「れ、レオン……あれ!」
 
ミリィが指をさした先を見て、俺は驚いて目を見開いた。

「な、何だよこれ……」
 
確かにそこにはセシルの屋敷があったはずだ。でもそこには燃えた後の屋敷の瓦礫が積み上がっていて、焦げ臭い匂いが鼻をツンとさせた。

「いったい何が?!」
 
俺は直ぐにセシルとブラッドの両親の姿を探した。でもセシルの姿は見当たらない。
どこを探しても、森の中を探しても、セシルの姿だけが見つけられなかった。
 
その後、魔法警察の人たちがやって来て現場検証が行われた。

その結果、燃えた後の屋敷の中からは、真っ黒に焦げ上がったブラッドとセシルの両親が見つかった。しかし、セシルだけは見つからなかった。