ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「前は助けて頂きありがとうございました! 噂には聞いていましたが、予想以上に綺麗なお方ですね」

「ど、どうも……」
 
オフィーリアは額に汗を浮かべ苦笑しながら言う。

「悪いミューズ。こう見えてオフィーリアは人見知りなんだ」
 
俺はオフィーリアの姿を隠すようにミューズの前に立つ。

「そうですか……すみません、驚きましたよね?」

「す、少しだけ」
 
オフィーリアの言葉にミューズは肩をガクッと落とした。
 
俺はまだミューズのことを疑っている。だからオフィーリアに近づいて何かするんじゃないかと思った。でも幸い今は何もされなかったようだ。

「ミューズ。あいつはどうした?」

「えっ? あいつって……」
 
ミューズはさっき通って来た道を振り返り顔を青ざめた。

「あああああっ!!」

「まさか逃したのか?!」

「そ、そんなまさか! さっきまで一緒に居たはずなんですけど」
 
突然声を上げたミューズは目に涙を浮かべるとオロオロしだす。あいつって誰の事だ?

「……すみません、レオンハルトさん。逃げられました」

「はあ……」
 
その言葉にレオンハルトは深々と溜め息を吐く。

「逃げられたって誰にだよ?」

「新しくこっちに配属された新人だ。ミューズに世話を頼んだんだが厄介な奴でな、こうして時たま仕事中に居なくなる時があるんだ」
 
レオンハルトがそう言うって事は、相当厄介な奴なんだろう……。

「あいつを探すのは後だ。ミューズ、持ってきた情報を俺に寄こせ」

「あ、はい!」
 
ミューズは持っていたメモ帳をレオンハルトに渡す。それを見ながら、レオンハルトは自分のメモ帳に何かを綴っていく。

「何の事件を捜査しているんだ?」

「最近、この辺りで人攫いが頻繁に起こっていてな。その調査だ」

「人攫い……」
 
そこで俺はミリィの事を思い出す。