ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「まさか……ミリィのやつ」
 
俺の中で嫌な予感が過る。もしかしたらミリィは道化師の奴らに。

「ブラッド」

「っ!」
 
そう考えたときオフィーリアの手がそっと俺の手に触れた。

「オフィーリア?」

「大丈夫よブラッド。もしミリィが事件に巻き込まれても私が必ず助けますから」
 
オフィーリアはそう言うと優しく微笑んだ。

「……それは俺の仕事だ」
 
俺はオフィーリアの髪に触れる。

「必ずお前もミリィも守ってみせるから」
 
そう言いオフィーリアの額に自分の額をくっつける。

「ありがとう、ブラッド」
 
オフィーリアは俺の手を握り返す。

「早くミリィを見つけましょう」

「そうだな。あと調べていない場所は……」
 
俺は言いかけた言葉をやめてある人物へと視線を向けた。

もの凄く見覚えのある後ろ姿が見えて、俺はこめかみをピクピクさせた。

「ブラッド?」

「ごめん、オフィーリア。ちょっと待っててくれ」
 
オフィーリアをその場に残し見覚えのある背中に向かってづかづかと歩いて行く。

「そうか。貴重なご意見をありがとうございます」

「いえいえ、参考になったなら良かったです」

「さて、後は聞いた情報をまとめて――」
 
俺は力を込めた拳を振り上げると、そいつの頭目掛けて思いっきり振り下ろす。

「こんなところで……何してんだよレオンハルト!!」

「いってぇっ!」
 
俺は病院で入院しているはずのレオンハルトの頭を殴った。

「いってぇぞブラッド! ……何でお前がここに居る?」

「それはこっちの台詞だぞ! 何でお前がここに居るんだよ!」
 
まだ退院出来る日まで数週間あるはずなのに、こいつはここで何をしているんだ?! 

「俺は事件の調査だ」

「そんな事だろうと思ったぞ。ミリィが知ったら発狂するぞ」

「だからお前にもミリィにも黙っていたんだ」
 
こいつ……今直ぐにでも縛り上げて病院送りにしてやりたい!

「どうかしたの?」

「わ、悪いオフィーリア。一人にして」

「それ良いだけど……」
 
オフィーリアはチラッとレオンハルトを見る。