ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「やっぱり駄目かな?」
 
そう言い彼はシュンとした瞳で私を見つめてくる。
 
その姿が可愛くて口ごもる。そんなの見せられたら断りにくいのに……。

「それに最近物騒だから」

「それをあなたが言いますか?」

「だからこれはナンパじゃいよ」
 
ナインは私の体を自分の元へと引き寄せる。

「ちょっ!」
 
こ、これは一体どういう状況なの?! 私……この人に抱きしめられて。

「あの離して!」

「ちょっと静かにして……」
 
低い声でそう応えるナインの言葉に、私は言いかけた言葉を飲み込んだ。

「言ったでしょ? 最近物騒だって」

「う、うん……」
 
ナインは私の首筋にそっと息を吹きかける。それがくすぐったくて、私はギュッと目を閉じた。

「最近この付近はね、人攫いが流行っているんだ」

「ひ、人攫い?!」 
 
じゃあ……もしかしてこの人は。
 
私は恐る恐る顔を上げる。

「特に君みたいな子とかはね、気を付けないと駄目だよ」

「っ!」
 
ナインの瞳を見て体が固まるのを感じた。その瞳はさっきとは違って、希望を失ったようなとても冷たい瞳だった。

✭ ✭ ✭

「たく、ミリィの奴はどこに行ったんだ?」

「これだけ探しても見当たらないなんて」
 
俺とオフィーリアは迷子になったミリィを探していた。
 
ミリィが行きそうなカフェや服屋を何軒か当たってみたが、どこにもミリィの姿は見られなかった。

目撃情報すらない。

「何か事件に巻き込まれたのかな……?」

「ミリィに限ってそんなことは……」
 
いやミリィなら考えられなくないか。
 
俺とレオンハルトと違ってミリィは戦うことを望まない。あいつは治癒魔法が得意だから、人を癒やすことに専念するタイプだ。