ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

私の目の前を一匹の子猫が通り掛かるまでは……。
 
オフィーリアの事を置いて子猫を追いかけた私が悪いのは分かっている。

「もう……私の馬鹿っ!」
 
きっと今頃オフィーリアは一人坊っちで、オロオロしているに違いない! 変な男に声を掛けられていたら……。

「早く戻らなくちゃ!」
 
早くオフィーリアを見つけてブラッドと合流しよう! そう思って裏路地を曲がった時。

「ねぇねぇそこのお嬢さん」

「……お嬢さん?」
 
誰のことだろう? 

絶対私ではないと思うけど、ここに私以外の女性は見られない。じゃあやっぱり。

「空耳か」
 
そう勝手に解釈して再び歩き始める。

「いやいや、ちょっとそこのお嬢さん!」

「えっ?!」
 
やっぱり私のこと?! 
 
私は声が聞こえた方へと振り返る。するとそこには、私と同い年くらいの少年が微笑みながら立っていた。

「……私に何か用ですか?」

「そうじゃないんだけど、可愛らしいお嬢さんが通ったなって」

「か、可愛らしい?!」
 
そんなこと初めて言われた……。レオンハルトやブラッドにすら言われ事なかったのに。
 
でもこれって世に聞くナンパってやつなのかな?

「ごめんね、いきなり声掛けちゃって。もしかして急いでた?」

「あ、はい」
 
急いでいるのは本当だ。早くオフィーリアを見つけてブラッドと合流しなければ。

「もしかして人でも探してるの?」

「な、何で分かったんですか?」

「だって凄く挙動不審そうにしていたから、迷子かなって」

「あ、はははは……そう見えましたか?」

「うん、凄く可愛いなって思ったよ」
 
青年の言葉が私の胸に響く。