でもそんな珍しい宝石をわざわざなぜ公の場で好評したがる? 宝石から女性の声が聞こえるなんて、裏取引でもすれば高額な価値になる代物だ。
 
なぜレギオはあえて宝石展示会を選んだ? 何かを狙っているとしか考えられない。

「もしかして道化師と関わっているのか?」
 
だが道化師が狙っているのは星の涙だ。いくらクラウンでもそんな事は表でも言えないだろう。
 
もしそんな事をしたら星の涙を誰かに奪われ兼ねないからだ。だったら道化師とは無関係か?

「でも何か引っかかる……」 
 
あの宝石が道化師と関係なくても何か――

「ブラッド」
 
宝石から聞こる女性の声……。そのとき微かに右目が疼いた。

「あれ……」
 
何だか気が遠くなって――

「ブラッドってば!!」

「っ?!」
 
突然耳元で名前を叫ばれ俺は慌てて振り返る。
 
そしてそこに居た人物を見て声を上げる。

「お、オフィーリア?!」

「やっと気づいた」
 
な、何でオフィーリアがこんなところに?! 

「お、お前一人でここまで来たのか?」

「一人じゃないです。途中までミリィと一緒だったんだけどはぐれちゃって」

「ミリィと?」
 
ミリィと一緒なら変な虫……じゃなくて、変な男たちに声は掛けられなかっただろう。でも今はミリィは居ないわけで。

「あいつどこに行ったんだよ?」
 
軽く息を吐き額に手を当てる。

「ねえ、ブラッド」

「ん? 何だオフィ――」
 
オフィーリアの指先が俺の頬に伸びると優しく触れた。それに俺の肩が上がる。