「へえ、宝石の展示会ですか。この店も何か出すんですか?」

「はい、最近入ってばかりの宝石を一品」

「一品だけ?!」
 
せっかくの展示会なのに、たった一品だけで良いのか?

「いったいどんな宝石なんですか?」

「それはですね――」
 
レギオは俺に近寄るとそっと耳打ちする。

「とても珍しい宝石でしてね。ルビィの宝石なんですが、なんと宝石の中から女性の声が聞こえると言うのですよ」

「っ!」
 
ルビィの宝石ってまさか、マナティのお母さんのペンダントに付いていた宝石なんじゃ?!

「中々お目に掛かる事が出来ませんので、ブラッドさんにも是非来て頂きたいですね」

「それは見応えがありそうな宝石ですね」
 
そう言って俺はレギオに微笑む。

「でもそんな世にも珍しい宝石を展示するなら、怪盗レッドアイには気をつけた方が良いですね」

「大丈夫ですよ。当日には大勢の魔法警察が警備に立ちまして、いくら怪盗レッドアイでも逃げ切るのは無理ですよ」
 
レギオはそう言って笑う。

「それなら、良いですけどね」
 
なるほど当日の警備は固いのか。でも今はレオンハルトとミューズは入院中だ。俺を捕まえる事が出来る警察なんて早々居ないだろう。

「ではその展示会を楽しみしていますよ」

「はい、待っております」
 
レギオに軽く頭を下げ俺は女神の涙を後にした。

✩ ✩ ✩

「宝石の中から女性の声、か」
 
ローレンから依頼を受けた時は、そんなこと一言も言っていなかったな。おそらくこの件はローレンも知らないのだろう。
 
何らかのきかっけでその宝石の情報を手に入れたレギオは、マナティの母親からルビィのペンダントを奪い取った。

そして今度はそれを近々行われる、宝石展示会でお披露目しようとしている。