「君が本気なら僕は止めない。他に何か聞きたい事はあるか?」

「そうだな……」
 
虹の花について詳しく聞く事は出来た。あと聞くとするなら。

「虹の花ってどこで咲くんだ?」

「それは僕も知らん」

「えっ?! じゃあどこを探せば良いんだよ?!」

「それは君が三百年の間で見つければいい」
 
ギルはそう言い捨てるように言うと、床に投げ捨てていた白衣を掴んで立ち上がる。

「悪いが時間切れた。これで失礼するよ」

「あ、ああ」
 
なんか急に機嫌が悪くなったな。
 
扉の方へ向うギルの背中をじっと眺めていると、突然ギルがこちらへと振り返る。

「ブラッド。ちゃんと怪盗としての仕事もするんだぞ?」

「や、やっぱりお前か! ローレンに俺のこと教えたのは!」

「俺以外に誰が居るって言うんだ。それがどうかしたのか?」
 
その言葉にイラッと来た俺は言う。

「前にも言ったけど、仕事の依頼を寄こすら事前に手紙をくれって」

「そんな時間などない。今だって外でナタリィが待っているんだ」

あ〜……さっきの人ね。

「ギルも大変だな。いろいろと」

「まったくだ。じゃあこれで行くが、虹の花について知りたいなら、もっと奥の方の本棚を調べてみるといい」

「分かった。ありがとうギル」
 
お礼を言い終える前に、ギルは図書室から出て行ってしまった。

「本当に忙しいやつだな……」
 
ギルに言われた通り奥の方の本棚を調べて見ると、ある一冊の魔法書が見つかった。
 
そこには虹の花についての説明以外にも、虹の花がどういう物で出来ているのかという説明も載っていた。

「なるほど、虹の花はマナを吸収して成長するのか」
 
三百年間も土の中でマナを吸収して成長するってことは、それなりの魔力を秘めているはずだ。
 
そして魔人族との関係は、虹の花は元々誰かの雫だったんじゃないのかと書かれていた。それがどういう経緯でその魔人の体から出て、一つの花として生まれたのかは分からない。

「虹の花は三百年の時を経て、一輪だけこの世に生まれるか……」
 
そうなると虹の花は早いもの勝ちになる。もし手に入らなくても奪えば良いだけの話だ。

「大丈夫だ。盗んだり奪うなんて俺の特技じゃないか」
 
そう言いローレンの依頼の件を考える。

「少し偵察に行った方が良いか……」
 
闇雲に予告状を送っても、どういうトラップが張られているか分からない以上、迂闊に手が出せない。

「今日の帰りでも寄って見るか」
 
俺は持っていた書物を手に持って魔法協会を後にした。