俺はオフィーリアの手を掴み体から引き離そうと試みる。しかしガッチリ抱きしめられているせいかびくともしない。

「女のくせに無駄に力あるよだよな……」
 
さてどうしたものか。

このままオフィーリアを起こして離れてもらう方が良いが、ぐっすり眠っているのにいきなり起こすのは気が引ける。

「頑張って理性保てよ……俺!」
 
なるべくオフィーリアに目を向けないように壁を見つめる。

「これいつまで頑張れば良いんだ?」
 
さすがにオフィーリアでもミリィが来る時間までには起きている。だとすると長くても二時間──

「いや、二時間も理性なんて保たねぇよ!」
 
だったらもうオフィーリアを起こすしかない!

「仕方ないか……」
 
俺はオフィーリアの頬を軽く叩く。

「お〜い、オフィーリア」

「んっ……」
 
オフィーリアは小さく身じろぎすると、抱きしめる腕に力を込める。
 
うん、これはまずい。今理性の糸が切れる一歩手前だ。

「お、オフィーリアさん! お願いだから起きて下さい!」

「う、ん……」
 
俺の声で起きた彼女は眠たそうにこちらに顔を上げた。

「…………ブラッド?」

「お、おはよう、オフィーリア。今の状況理解できるか?」

「……えっ?」
 
小さく首を傾げるオフィーリアが可愛くて、抱きしめたくなる衝動をなんとか抑え込む。

ここで理性を切るわけにはいかない!

「自分の腕見て」

「腕?」
 
オフィーリアはゆっくりと自分の腕を見つめた。

「………ええっ!?」
 
今の状況に気がついたオフィーリアは、顔を真っ赤にして慌てて俺から離れる。

「も、もももしかして、ずっとブラッドの体を抱きしめていたの……?」

「うん、まあ正確には数分だけなんだけど」
 
オフィーリアは【数分】という言葉で更に顔を真っ赤にさせた。そしてわなわなと体を震わせると自分の手を見下ろす。