ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「……はあ」
 
レオンハルトは何を思ったのか深く溜め息を吐いた。

すると突然、変な事を言い出す。

「お前も魔法警察に来たらどうだ?」

「………………は?」
 
その言葉に俺は目を瞬かせてレオンハルトを見下ろす。
 
こいつ、今何つった?

聞き間違いじゃなければ、魔法警察に来いって言ったよな?

「だからお前も警察に来れば良いだろ? お前の実力やその頭なら警察学校なんて飛び級出来るだろうし、俺と同じ位置に上がって来る事なんて簡単だろ?」

あ、やっぱり聞き間違いじゃないのか。
 
確かに俺ならレオンハルトの位置ぐらい簡単にたどり着くことは出来る。

しかし――

「悪いが俺は探偵だ。俺は探偵として誇りとプライドを持ってこの仕事をしている。その誇りとプライドを捨てて警察になる気なんかい一ミリもない」
 
それに俺がレッドアイだとバレる可能性だってあるんだ。

それを承知のうえで警察になるとか自殺行為だ。

「……強制させるつもりはない。頭の片隅にでも置いておいてくれ」

「はいはい」
 
俺はどかっと椅子に座り直し紅茶を飲む。

「それじゃあ、お前に一つ仕事を頼むか」

「えっ! 仕事くれるのか?」

「だからお前にこの話をしたんだろ?」
 
てことは俺に通り魔を捕まえろって言うのか?

「お前一人なら充分だろ?」

「ああ、充分だ。だが……」
 
俺一人じゃ殺しかねないぞ。

「生きて連れて来てくれたら、お前が欲しがってた情報を一つ提供してやるよ」
 
その言葉に体が反応して再び立ち上がる。

「ほ、ほんとか! 何でもくれるのか?!」

「もちろんだ。【生きて連れて来てくれたら】な」
 
レオンハルトは念を押すようにそう言うと、金を机の上に置いて足早にカフェから出て行った。

おそらく仕事の時間なのだろう。

「ふ、ふふふ」
 
俺は肩を震わせて笑いを堪える。
 
ついに、ついにこの時が来た! あの宝石の情報を手に入れる日が!

「これは何としてでも通り魔を捕まえてやらないとな!」
 
瞳に闘士が宿り拳に力を込める。

「捕まえるなら裏路地を見張っていれば行けるか?」
 
それとも俺自ら赴くか?