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シャグ様のお葬式が行われて数ヶ月が経った頃、お母様の体に異変は起きた。

「げほっ! ごほっ!」

「母さん! 大丈夫ですか?!」
 
お兄様は咳き込むお母様の背中を優しくさする。その光景を私は不安気に見つめていた。

「ええ、大丈夫ですよアルバ」
 
ここ最近お母様の体調は優れなかった。咳き込んで寝込む日が多くなり、そのせいで吐血する日もあった。
 
外を出歩く事も難しくて、一日という時間をほとんど家で過ごしている。そんなお母様の側には必ず私かお兄様が居るようにしていた。何かあった時すぐ医者を呼べるようにと。
 
私はお母様にお水を持って来ようとして下の階へと下りる。

「ねえ……母さん。母さんが死んだら、その星の涙はオフィーリアに受け継がれるんだよね?」

「ええ……」
 
お母様の言葉にお兄様は拳に力を込める。

「何で……オフィーリアなんだ! オフィーリアはまだ八歳なのに」

「私もオフィーリアにこんな重たい物を背負わせたくありません。しかしこれは運命なのです」

「母さん……」

「アルバ。オフィーリアを守ってあげてください」

「はい! この命が尽きる瞬間まで必ず守ってみせます」
 
そんな二人の話を私は盗み聞きしていた。

重たい物って何のことだろう? 
 
私はそれをお母様の口から聞きたかった。でもそれを聞くのは怖かった。知ってしまったら後戻りが出来ないと思ったからだ。

「母さん、一つ聞いてもいいですか?」
 
私は扉の隙間からお兄様の様子を伺った。

「オフィーリアが星の涙を体に宿した時、オフィーリアの寿命はどうなりますか?」

「っ?!」
 
私の寿命ってどういうこと? 星の涙と寿命が何か関係してるの?