「オフィーリア……」
 
オフィーリアがゆっくりと顔を近づけてきた時、目の前にある物が姿を現す。

「レーツェル?」

「えっ?」
 
レーツェルはオフィーリアの前に現れると、何かを言うように左右に揺れる。その姿を見た彼女は微笑むと言う。

「良いの。これは私の役目だから」
 
何のことだと思った時、彼女の唇が俺の唇に重なった。

「んっ?!」
 
突然の出来事で頬に熱がこもったと同時に、体の中に魔法が流れ込んでくるのを感じた。
 
いや待て! その前にこれって……。
 
オフィーリアは唇を離すと傷跡を確認する。

「良かった。無事に塞がったみたい」

「へ?」
 
その言葉に俺はオフィーリアに斬られたところに触れてみる。そこにはさっきまで傷があったはずなのに跡形もなく塞がっていて、傷跡すら残っていなかった。

「いったい何の魔法を使ったんだ?」

「治癒魔法の一つ癒しのキス(クラシオンフィリマ)よ。昔からエアの末裔に伝わっている魔法なの」

「そ、そっか……」
 
でもさっきのはキスで良いんだよな?

「私は……ブラッドを信じる事が出来なかった」

オフィーリアは俺の服をギュッと掴む。

「ねえ聞かせて。どうしてこの星の涙を探していたの?」
 
オフィーリアは真っ直ぐな瞳で俺を見てくる。そんな彼女を見つめ口を開く

「それは俺自身の願いを叶えるためだ」

「願いって?」

「元の体に戻る事だ」

木に背中を預けながら話し始める。

「俺が怪盗レッドアイを始めたのは、星の涙と言う何でも願いが叶う宝石があると知ったからだ。もしその宝石を手に入れることが出来たら、俺の望みが取り戻せると思った」