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ずっと人を信じする事が怖かった。信じてしまったら、また裏切られると思っていたから。だからブラッドも最初はそうじゃないかと思っていた。

でも彼は違った。
 
彼は孤独だった私の手を引いてくれた。暗闇の中から光の世界へと私を連れ出してくれた。
 
私が求めていた言葉を彼はちゃんと言ってくれた。隣に居てくれると言ってくれた。それが……何よりも嬉しかったんだ。

この人なら心から信じられるとそう思えたんだ。

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「あ〜あ、つまんないの。どうしてそう上手く完結しちゃうんですか?」
 
アルファはゆっくりと俺たちに近づいて来る。俺はそんなアルファを睨みける。

「でもブラッドさんはさっきの一撃で、立っているのがやっとみたいなので、次の魔法で楽に殺してあげますよ」
 
その言葉に俺はニヤリと笑う。

「誰が立っているのがやっとだって?」
 
俺はオフィーリアの手を握る。それに気がついたオフィーリアも握り返してくれた。

「だってそうじゃないですか? 君にはもう魔力が残っていなし深手を負っています」
 
だから自分の方が優位に立っている、そう言いたいのだろう。

だがな……クソガキ。

「お前さ……少し俺を甘く見てないか?」

「はい?」
 
俺はアルファに向かって手をかざす。それに焦ったのかアルファは表情を歪めた。

「もう魔法は使えないはずじゃ?!」

「誰がもう魔法が使えないなんて言ったよ!」

俺は右目に魔力を注ぐ。するとアルファの足元に魔法陣が浮かび上がる。

「なっ!?」
 
その様子を見て俺は軽く笑う。どうやら足元に魔法陣が描かれていた事に、本気で気づいていなかったようだ。

俺たちが戦っているのに気が行き過ぎていたせいで、見落とししただろ?
 
俺はあざ笑うようにアルファを見る。

「そんな! この僕が……まさか、戦っている最中に魔法陣を描いていたのか?!」
 
アルファの言う通り、オフィーリアと戦いながら俺は魔力を足に込めて魔法陣を描いていた。自分のまいた種が、まさか自分を貶められるなんて思っていなかっただろう。