ミリィは軽く溜め息を吐くと腕を組んで背を向ける。

「言っとくけど、女の子とイチャイチャしている暇なんかないんだからね。今日は買う物が多くて――」
 
その言葉にピンときた俺は直ぐに口を開く。

「おっと、悪いミリィ。俺はこのあと女神たちに挨拶に回らないといけないんだ」

「……はぁっ?!」
 
俺は清々しい笑顔をミリィに向け手を上げた。

「それじゃあ!」
 
最後にマリアの手の甲にキスを落とした後、俺はミリィから逃げるようにその場を後にした。

「に、逃げられたぁぁぁ!」

☆ ☆ ☆

行き慣れた裏路地を走り抜けながら大通りに向かって走って行く。

「ミリィの買い物なんかに付き合っていたら荷物持ち確定だからな」

それだけは絶対に避けねば。
 
裏路地を抜けて大通りに出た俺は一息つく。

「さてと」
 
少し乱れた服装を整え歩き出す。すると周りに居た女性たちが俺をチラチラと見始める。

「ねえ、あの人かっこよくない?」

「あれって……ブラッド様じゃない?」

「ブラッド様よ!」
 
俺の存在に気がついた女の子たちが徐々に集まり始め、いつの間にか俺の周りには大勢の女の子たちが集まっていた。

「やあ、みんな久しぶりだね」

「ずっとお会いしたかったですわブラッド様」

「俺もだよカナリア。君の瞳は俺だけの物だからね」

「ずるいですよ! わたくしだってブラッド様に会いたかったですわ!」

「俺だってラミアに会いたかったよ」

はあ……モテるって罪だよな。
 
しかしそんな罪でもこうして女神たちが喜んでくれるのだ。

それなら俺は何度だって【モテる】という罪を犯そうではないか。