何時間も追いかけて、遂には山を降りる。
でも山を降りたと同時にその人影は消えていた。
「……っ!?」
山を下って、少し歩いたところで、あたしは恭ちゃんに会ってしまった。
「……流石……」
最後に名前を言ったように感じたけど、小さな声で聞こえなかった。
だけどその言葉はさっきの子に言っているんだとすぐに判断する。
「……真っ直ぐ行けよ。」
「え?」
目を見張る言葉。
あたしを連れ戻すどころか、逃がしてくれるの?
どういう心境の変化よ。
「早くしないと、兄さんが来るよ。」
後ろから声が聞こえた。
「……誰?」
背が高く、スタイルが良い男のような人。
パーカーのフードを深くかぶって、顔が見えない。だけど、阪上兄弟の兄のことを兄さんと呼ぶのだから、コイツも兄弟なのか。


