タイヤで轢かれたのではなく、恐らく車のどこかに当たって跳ね飛ばされたんだろう。

側面の歩行者用信号が点滅している。俺はサイドブレーキを解除して発進準備をする。

すると、

妙齢のご婦人が眉をひそめてやって来た。足元の死骸に気分を害されたのだろう。

違った。

そのご婦人は猫をひょいと抱き上げ、すたすたと俺の後方へ歩き去った。

「えっ?」

 ププーッ

後続車のクラクション。目前の信号はとうに青く光っていた。

いや、でも。

だってさぁ。


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