そしてその切ないストーリーは、主要人物たる都葵から遡ること三代前、阿葵の少女時代から始まったのです。

沙羅という、半ば魔術的な手先の器用さを持った時計店店主。彼女が作ったオルゴールに彼の魂が、願いが、そして愛が込められたのです。

この話に出て来る男性は4人。阿葵の先立った夫と、18歳の阿葵が恋した彼『亨』とその担当医師。

そして亨の思念が物体化した、箱の中の住人である『彼』の4人しか出て来ない。

その必要最小限の人物構成がまた、切なくも胸熱くするお話を引き締めています。

飛び飛びに散りばめられたピースが集約して、a wooden boxという絵になった時、じんわりと温かいものが貴方の胸にも去来したに違い有りません。