まず題名がいい。『オルゴール』ではこの作品の切なさを表現出来ない。

木製の箱では漠然とし過ぎる。

woodenという単語の持つ悲哀を効果的に使った題です。

そして不思議な感じの始まり。

一体彼は何者なのだろうという興味が次頁への期待を掻き立てます。

そして数々の伏線がちりばめられますが、それを丁寧に拾い上げ、話に一貫性を持たせているのです。

小難しい言葉を弄している訳でもないのに、しっかりとした読みごたえが感じられるのは、その作り込みの丁寧さ故だと思います。

そして情景がありありと浮かんで来る描写。

邪魔にならない程度のそれが人物を引き立てています。