「あー、ううん。なんでもない。私は学校に行ってくるから」 「ああ、行ってらっしゃい」 「……行ってきます」 部屋を出た途端、ため息をついてしまう。 崇さんがあそこにいた理由をお父さんに聞こうかと思ったけど、できなかった。 まだ二人で話すということ自体に慣れてなくて、言葉がうまく出てこないんだ。 私は1階に下りると、鞄を持って家を出た。 すぐに、「おはよー」と真衣から声がかかる。 門扉の向こうで真衣が手を振っていた。