「いやいやいや。力も何も私には翼先輩に貸せるものなんて……」
「あるだろーが。世界最強の魔力を持つ魔法使いさんよ?」
苦笑いをしながら丁重にお断りをする私に不敵にニヤリと翼先輩が笑う。
「…………」
最強と言っても翼先輩の言う通り魔力限定の話なのでこの場では全く使えないとわかっていそうなものだが、その不敵な笑顔に何か意味を感じ、黙って翼先輩の次の言葉を待つ。
あの翼先輩だ。
何か策があるのだろう。
「お前はただ、その有り余る魔力を放出するだけでいい。あとはそれを魔法石の要領で俺が利用する」
「え」
そんな無茶な。
人の魔力で魔法を使うなんて荒業、聞いたことも見たこともない。
自信に満ちた表情を浮かべながらも「ま、大和ほど器用じゃねぇーから一か八かだけどな」と言う翼先輩に驚き過ぎて表情が固まる。
確かに魔法石なら他人の魔力でも魔法が使える。
が、生身の人間の魔力は別だろう。
だが、同じ百花であっても、A級の翼先輩とS級の珠樹では力比べをするにはやはり差が出てくる。
先ほど翼先輩がほんの少し後退していたことが何よりも証拠だろう。



