ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく



6限目の古典の授業が終わって放課後。

帰り支度をしたクラスメイトたちが次々と教室を出ていく中、私は混んでる時間帯を避けてわざと遅めに昇降口へと向かった。


校内はびっくりするほど静かで、自分の靴箱の前で私は一瞬固まった。

……そうだ。すっかり忘れていたけど誰かに破壊されてたんだっけ。

開閉式の扉の真ん中は大きくへこんでいて、ぶつかったというより明らかに意図的に殴ったような跡。

嫌がらせなのか、なんなのか。

壊されたことは別にいい。私のモノじゃないし、靴箱になんの愛着もないから。だけど私は「はあ……」とため息をついて、右利きなのに左手をそっと扉に近づけた。


「なあ、羽柴」

突然耳元で声がした。

ビクッと体が反応して、驚いた拍子に思わず靴箱に右手を付けてしまった。あ、と思った時にはもう遅くてビリビリと壊された部分から〝感情〟が流れてくる。


――『末次(すえつぐ)。学期末のテスト学年で2位だったな。次は頑張れよ』

『はい』

ああ、なんで完璧だったのにアイツに負けたんだ。しかも全教科満点だって?先生たちの期待が僕じゃなくてアイツになってしまう……。


『今回はたまたまだよ。山勘が当たっただけで、末次には敵わないし』

『はは。勘でもすごいよ!友達として誇らしいよ』

なんで僕がこいつに負ける?塾だって通ってないし、自己流の適当な勉強しかしてないのになんで?

ああ、本当にイライラする。この笑顔も、たまたまだよって謙遜する言葉も全部イライラする……。


流れてきたのは学年で一番優秀な末次の心。

末次はそのイラつきとストレスから靴箱を殴った。

私の靴箱だったのはちょうど自分の真後ろにあったってだけで、その憎悪はいつも一緒にいる友達に向けてのものだった。