ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく


私から言わせれば詩月はカメレオンに似てる。


男子とも女子とも分け隔てなく仲良くして、バカ騒ぎをする時は一緒にして真面目な決めごとの時には必ず中心になってみんなをまとめる。

だけど、たまにフラッといなくなって居場所を聞いてもみんなが知らない。

とても目立つのに消えるのがうまくて、話上手で聞き上手なのに自分のことは語らない。

それを深く探られても、相手が気づかない内に話をすり替えて、誰もイヤな気持ちにはならない。

誰とでも仲良くできて、どこにでも溶け込めて。青にも赤にも緑にもなれるけど、白を越えて透明にもなれるって感じ。


「詩月って勉強できるし運動神経いいし本当に完璧だよね。欠点がないっていうかダメなところがないって感じ」

詩月が他の友達の元へ行ったあとも女子たちは私の悪口なんて忘れて詩月の話ばかりをしていた。

「あれ、そういうのなんて言うんだっけ?ひの……ひのなんちゃらかんちゃら」
 
そう、詩月は非の打ち所がないのだ。

人の隙間に入るのは得意なのに自分の隙間は決して見せない。詩月世那(せな)は私から見ればすごく怖いぐらい謎の人だ。