詩月に触れても詩月の気持ちは読めないから、
もし自分だったらって考えた。
空白の記憶の中で悪い友達と付き合って、悪いことをして、誰かに恨まれたり、誰かを傷つけていたらどうだろうって。
ショックというより、やっぱり現実味がないかもしれない。覚えていないということは自分がしたことを全て正当化できてしまうから。
「……やめる?」
詩月の顔を見てそんな言葉が口から出た。
すると再び首を振る。今度は少し力強く。
「やめないよ。俺がなにをしてたのか尚更知らなきゃいけない気がする」
「………」
私はゆっくりと詩月のこめかみの傷を見た。そこから見えた思念。詩月の家に行った時もそうだ。
まだなにも確証はないけど、詩月の過去を探る上で家族は避けて通れない気がする。
――『……いい加減にしろっ!!』
振り下ろされる圧力と暴力。
これも絶対に伝えなきゃいけないことだって分かってる。だけどさっきの話でショックを受けている詩月に連続で話すのは酷すぎて……またゴクリと飲み込んでしまった。



