「……ば。羽柴?」
ハッと現実に戻るとまだ詩月の顔が目の前にあった。
初めて見えた詩月からの思念。いや、正確には傷跡に残っていた記憶。
またきみのことをひとつ知ってしまったよ。
こんなのどうでも良かったはずなのに。ただの気まぐれで暇だから手伝ってやるかって軽い気持ちだったのに。
私だって普通の中学生や幼少時代を過ごしている詩月が見える予定だったよ。それで全然変わってないじゃんって笑ってやろうと思ってた。
それなのに知れば知るほど、その真っ白な心とは反対のものが見えて。その色は他の誰よりも。
ううん、私よりも真っ黒かもしれない。
「詩月。本当に全部受け入れる?全然違う自分でも、どんな生活をしてどうして記憶がなくなったのか知ったあとでも、絶対に後悔しない?」
遊びではない気がした。
ちゃんとお互いに覚悟をしないと踏み入れてはいけない気がした。
「うん。後悔しない。絶対に」
こんな力なんて大嫌いだけど、今すぐにでも捨てたいぐらいだけど。それでも詩月が知りたいのなら。
その瞳の奥に眠るものが見たいのなら、どんな結末が待っていたとしても、本当の詩月を見つけにいこうと決めた。



