私たちはそのあと街が見渡せる高台へと向かった。木造の手すりに囲まれて100円を入れれば見ることができる望遠鏡が三つ。
ここは歴史上の跡地で石碑に説明文が書かれているけど詳しく読んだことはない。ただ風通しが良さそうだから来てみただけだ。
「こうして見るとけっこう立派な街だよな。交通の不便もないし遊ぶところもいっぱいあるし」
詩月のサラサラとした髪の毛が揺れていた。
きっと誰も詩月が記憶喪失だなんて思わないだろうね。だって詩月は普通の高校生で普通の男の子で。普通に毎日楽しく充実した日々を送っているように見える。
ひとりぼっち?どこが?
ひとりぼっちっていうのは私みたいなことを言うんだよ。
「羽柴。俺の記憶探しのことだけど。面倒だなとか疲れるなとか思ったらすぐに言って」
「え……?」
「なんか強引に押し付けちゃった部分もあるしさ。東和田市に行った時も結局なにも分からなかったし。やっぱりムリなのかなって諦めてたりもするから」
詩月の表情は寂しそうな、悔しそうな、開き直ってそうな、そんな複雑な顔をしていて。
なんでも分かってしまうことがイヤだったくせに、詩月の本心が読めなくてモヤッとしている。
……私も勝手だね。さっきまで友達と遊んでいる詩月に嫉妬さえしていたのに。
私は右手で自分のことを触ってもなにも感じないから、今なにを思って、なにを言おうとしてるのかさえ曖昧なまま。



