と、その時。今の気持ちとは真逆の明るい着信音が部屋に鳴り響いた。スマホを手に取って確認すると画面には【着信 詩月】の文字。
私の心の声が詩月に伝わったのだろうか。なににせよ噂をすればというやつだ。
『羽柴?』
電話に出るとすぐに耳元で低い声。
『なに?』
とっさに強い口調で返してしまった。
このスマホで誰かの声を聞くのは久しぶりのこと。最近はアラームと簡単なパズルゲームをやるぐらいしか使い道がなかったから。
『なにしてんの?』
『……課題……やってるけど』
『こんなに天気がいいのに勉強してんの?』
『関係ないじゃん』
『関係あるよ』
やっぱり詩月の声はスピーカー越しに聞くとなにか違う。耳当たりが良くて重低音の心地いい声。悔しいけど声フェチの人が騒いでいた理由が今さら分かった。
『で?用件は?』
だからといって私の態度が変わることはないけど。
電話の向こう側はガヤガヤとしていて、とても騒がしい場所にいることは想像できた。
『今さ、市民プールにいるんだよ』
なんとなくそうかなって思ってた。だって水しぶきの音もするし飛び込み禁止のアナウンスも流れていたから。
『それで?』
『来ない?』
『行くわけないでしょ』
分かりきったことを聞くなよって感じ。
きっと一緒にいるのはクラスメイトの人たちだ。どうせ強引な誘いを断れなかったんだろう。
『プールにじゃないよ。俺もこのあとひとりで抜けるからどっかで待ち合わせしない?』
『………』
『会いたいから、さ』
その言葉がどういう意味なのか、私はちゃんと分かっている。そんなに頼りにしないでよ。
この力だけが必要なら、詩月にあげたいくらい私はいらないのに。



