そして夏休みに向けてみんなが胸を踊らせる中、私は相変わらず憂鬱で。それが消化できないまま終業式を終えた。
毎朝のアラームを解除して、唯一の楽しみは早起きしないで済むことぐらい。夏休みがはじまってすでに3日。
そういえば家から一歩も出ていないことに気づいた。
――ガチャ。
自分の部屋で課題をやっていると1階で玄関を開ける音がした。またいつものようにスーパーの買い物袋をテーブルに置いて冷蔵庫を開ける。
家が静かだからか、それとも筒抜けの構造なのかは知らない。だけど耳をすませなくても聞こえてしまう母の生活の音。
鍵と一緒に置いたスマホのバイブ音は着信設定にしてるよりすごく響いて、母は小声で電話に出た。
『もしもし?うん。今買い物から帰ってきたところ。うん、うん……』
次第に遠退いていく声。
どうやら電話をしながら外に出たみたいだ。
とても不快だ。私に聞こえないようにコソコソと電話をしてることも、たまに仕事ではない用事で帰りが遅いことも。
母の〝相手〟は知っている。料理教室で出逢った年下の男。ちなみに妻子持ちで2年前は離婚調停中だった。



