――『かんぱーい!今日もこんなに高いお酒頼んじゃっていいんですかあ?』
綺麗なガラスの装飾品に囲まれた場所。ガヤガヤと騒がしい空間。まるで蝶のように着飾ったドレスを着て、暗闇でも栄えるような厚化粧と真っ赤なルージュをつけた女性たち。
『いいのいいの。俺社長だし』
『あの有名なIT企業ですよね?本当にすごーい!だからこんなに素敵な時計をしてるんですね!』
『まあね』
女子受けが良さそうな甘い香りのたばこを吸って、高級ソファーに寄り掛かりながら足を組む姿。
その映像と一緒に匂いや雑音までもが頭の中に入ってきて、くらっと目眩がしたところで私は〝それ〟から解放された。
「どうした?」
心配そうに私の顔を見る担任。
「……べつに、なんでもありません」
私はそう言って昇降口に向かった。



