そんなことを考えながらベッドに横たわっていると、暫くしてバタバタと1階が騒がしくなった。

買い物袋の音に冷蔵庫を開ける音。私はここ数年その〝音〟でしか生活を感じていない。

階段を上がってくる足音も、その足が私の部屋の前で一瞬止まることも、諦めたようにまた遠ざかっていくことも数年前から同じ。

母は私への接し方が分からないのだ。
私が母への接し方が分からないように。


思えばこのおかしな力も母と今はいない実の父親の影響からだと思う。

私には話してくれない大人の事情。

家族なのに、私にだって知る権利はあるはずなのに、バラバラになっていく両親の姿をドアの向こう側で見ているだけ。

毎日聞こえる言い争う声。

『お前が悪い』『あなたのせいよ』とお互いに怒鳴り合って、喧嘩の原因を尋ねても私には関係ないと、追い払われる。

ただ、知りたかった。どうしてこうなってしまったのかを。

その裏側にドロドロとした醜い世界があるとは分からずに。