『これを機に家の模様替えでもしましょうよ!
もう少し家族で話せるようなそんな空間を作って。あなたも難しい本ばかり並べるのはナシですよ?』
『……そう言われてもなあ』
世那が家に帰ってこなくなって、なにが悪かったのかをずっと考えていた。親として出来る限りの学べる環境は作ってあげたい。
知識をつければ、それは将来に繋がると思っていた。
今でもその考えがなくなったわけじゃない。だけど大事な大事な息子を失いたくないから。少しずつ自分たちも変わっていく努力をしないといけないと思った。
この誕生日会をきっかけに、また明るい家族に戻りたかった。
『私、世那のことでお母さんにも叱られたの。
いま思えばとてもきついことを言ってしまった』
『あとで謝りにいけばいいよ』
『そうね』
母は濡れた手をエプロンで拭きながら、その足はソファーのほうへ。日が暮れた外を何度も確認しながら世那が帰ってきてくれるのを待っていた。



